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うらわの民の金融blog

徒然なるままに約1000文字…金融兵士→コンサル戦士による金融系戯言録

AIがコンサルの仕事を変えるとき、リスクアドバイザリーは何が残るのか——AML実務の視点から

こんにちは。

以前、「コンサルタントの仕事はAIに『任せる側』になれるか」というタイトルで、コンサルティング業務全体におけるAI代替の構造を整理しました。

コンサルタントの仕事は、AIに「任せる側」になれるか——2〜3年後に求められる能力を考える

今回はその続編として、「では自分の飯の種であるAML/CFT(マネーロンダリング・テロ資金供与対策)のリスクアドバイザリーは、この構造変化の中でどこに立つのか」という問いに絞って掘ってみます。前回を読んでいない方にも単独で読めるよう、前提は本記事内で簡単に整理します。

 

前提:コンサル業界全体で起きていること

AI代替の話は「雰囲気」ではなく、数字がある議論です。Goldman Sachsの2023年の試算では知識労働者の業務の25〜50%がAIで代替可能とされており、Accentureは同年3月に約1.9万人の削減を発表しつつ、6月にはAI人材を4万人から8万人へ倍増させる投資を発表しています。「中間層の工数型コンサルをAIで代替し、上位層に再投資する」という構造転換は、最大手ファームで現実のものとなっています。

この波は、AMLという特殊領域の足元にも確実に及んでいます。

AMLコンサルの中にも「代替される側」はある

「リスクアドバイザリーはAIに強い」という話をする前に、まず正直に認めておく必要があります。AMLコンサルの仕事にも、代替されやすい要素は相当あります。

AML/CFT体制の構築・高度化プロジェクトを動かすとき、純粋なアドバイスだけでなく、各部署へのヒアリング調整、課題管理のメンテナンス、規制対応の進捗報告といったPMO(プロジェクトマネジメントオフィス。案件の進捗管理・調整を担う機能)的な作業が相当量発生します。加えて、ガイドライン(GL)のサーベイ、ギャップ分析の初期ドラフト、チェックリスト生成——これらもすでにAIが相当程度こなせます。私自身、日常的にAIを使っており、かつて工数をかけていた「調べて整理する」部分は確実に圧縮されています。

「資料を作ること」の価値はなくなりつつあります。では何が残るのか。

残る可能性が高いもの——「データの問題」ではなく「ガバナンスの問題」

当局との「交渉的なやりとり」を読む能力が残る、というのが自分の実感です。金融庁検査や日本銀行考査の場で、監督官の意図を解釈し、クライアントが何をどう説明すれば落とし所を見つけられるかを設計する作業です。

ここに対してよくある反論は、「過去の行政処分事例や金融庁のモニタリングレポートをAIに学習させれば、当局の問題意識の傾向も予測できる」というものです。ただ、このロジックには見落としがあると思っています。当局が金融機関に対してオンサイトで確認しにくるのは、「問題点の把握」だけではありません。最終的な責任主体である経営陣や担当責任者が、リスクをどう認識し、どう腹を決めているかという「生身のコミットメント」を確認する作業でもあります。AIがどれだけ精緻な予測を出せても、「責任を背負って当局と握る」という行為はAIに代替できません。これはデータの問題ではなく、ガバナンスの構造問題です。

AIが使われるほど生まれる、AML固有の新しい問い

「なぜその設計にしたか」の説明責任という論点も重要で、こちらはむしろ新しい市場になる可能性があります。

AIがギャップ分析や疑わしい取引の検知(TMS)の閾値設定、顧客リスク評価(CRA)のロジック生成を担うようになると、金融機関には新たな問いが突きつけられます。「AIの出力結果は本当に妥当か」「その判断プロセスを第三者が検証できるか」「なぜその設計を採用したのか、監査証跡(Audit Trail)をどう残すか」——これはモデル・バリデーション(Model Validation:AIやシステムの出力が規制水準を満たしているかを独立的に検証するプロセス)の問題です。

当局が最も懸念しているのは、金融機関自身が自社のAIの挙動を説明できないこと——いわゆるExplainable AI(説明可能なAI)の欠如です。「システムを導入するコンサル」の価値が下がり、「AIの出力が規制水準を満たしているかを第三者的立場で検証するコンサル」の価値が上がる。これがリスクアドバイザリーの次の主戦場になると見ています。

現時点では「AI専用のAML基準」が新設されるというより、既存のモデルリスク管理や継続的顧客管理の検証態勢に関する監督指針の解釈が厳格化していく方向で、実務上の要求水準がじわじわと切り上がっている、というのが実感に近いです。

現時点の整理

  • 管理・調整系の工数代替は進行中であり、AMLコンサルもその外にはいない
  • 当局折衝が代替されにくいのは「データがないから」ではなく「当局は責任を負う人間のコミットメントを確認しにきているから」というガバナンスの構造問題
  • AIの活用が進むほど、モデル・バリデーションや監査証跡の整備が新しい主戦場になる

自分が薄気味悪いと感じているのは、この価値の移行がじわじわ進んでいる一方で、それを適切に評価する市場側の仕組み——契約形態・報酬設計・責任の所在——がまだ整っていない点です。仕事の中身が変わっても、それが適正に報われる構造が追いついていない期間が、しばらく続くのではないかという感覚があります。

この整理で書けなかったこと:クライアント企業のAI活用成熟度によって変化スピードが大きく異なるはずで、そこは別で論じてみたいと思っています。

長くなりましたが本日はこれまで。


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