こんばんは。
うらわの民です。
GWに突入し、溜まりに溜まった本を読んでおりましたところ、今月1回もブログを更新していないことに気づき、急ぎ更新しております。
本日は表題の件について、『地域金融機関のデジタルトランスフォーメーション〜北國銀行にみるゼロベースのシステム戦略と組織人事〜』(以下、本著)を読んで、共感できた部分について、つらつらと書いていきたいと思います。
ちなみに北國銀行は金沢に本店を持つ地方銀行です。
なお、本著は北國銀行が運営するECサイトでしか買えない珍しい本ですので、気になった方は、以下のリンクから購入してみてください。
1.CSVと地域金融機関の関係性
いきなりCSVといったところで、多くの方はEXCELのCSVファイルしか思い浮かべないでしょうが、ここで言うCSVとは「Creating Shared Value:共有価値の創造」を指します。
CSVについては「ポーターの競争戦略」で有名なポーター教授が提唱した概念で、「経済的価値を創造しながら社会的ニーズに対応することで社会的価値も創造すること」というアプローチです。
これだけだとさっぱりですが、自分なりの解釈としては、「社会課題を解決した結果、顧客も便利になり、企業も利益があがる」という「三方よし」を現代で表現したものと理解するようにしています。
それを踏まえた上で、本著で記載されている内容に戻りますが、北國銀行が7年前に「真の顧客本位の経営に向けた営業戦略の大転換と、地域総合会社へのトランスフォーメーション」をスタートさせた際の問題提起として以下のような仮説と議論が行われています。
議論としては至極全うで、多くの地方銀行でも思い当たるフシがあるのではないでしょうか。
「地域とともに豊かな未来を築きます」と理念で謳いながら、、、
- 目先の利益を優先、プロダクトアウトの戦略
- 理念と現実、現場は違う
- 自社の利益と矛盾してまで社会貢献を行うのは無理
- 営業で必要なのは最終的にはプッシュとお願いという潜在意識
これに対して
- 企業や個人、社会の課題を解決することや、人のよりよい暮らしをサポートすることを優先させた結果として、最後は自社の利益になる(P.27抜粋)
との論理・認識を共有を北國銀行では行っています。
この考え方はまさしくCSVな考え方だと考えます。
ただ、北國銀行の論理・認識を文字にして見ると地方銀行の本質をただ書いているだけでは?と思われる方も多いことでしょう。
なぜならば、本来地方銀行は地域経済の発展と寄り添いながら発展していく組織であり、もともとCSVの概念に近しい組織なはずだからです。
北國銀行は自らを省みて、今一度自らの地域における役割を再定義し、CSV経営に舵を切りました。その改革の一環として2016年にノルマ※を廃止しています。
※ただし、「自主目標」というものは存在するようですが(ゲフンゲフン
2.CSVのためにあるべき銀行機能
上記で説明したように、「地方銀行はCSVを体現して然るべき組織である」というのはなんとなく理解いただけたと思います。では「社会課題を解決する銀行の機能」はなんでしょう?
真っ先に「融資」が思い浮かぶと思いますが、お金を貸すだけで解決できる社会課題はあまり多くありません。そもそも「金融」だけで解決できる課題のほうが少ないと思います。
ここで必要となってくるのはコンサルティング機能であるわけですが、ここでいうコンサルティング機能は地銀各行無料で提供するものではなく、有料で提供するレベルの結果にコミットしたコンサルティング機能となります。
北國銀行では、従来のビジネスマッチングに加え、自社内に90名超のコンサルタントを抱え、中小企業へのグループウェア導入等のICTコンサルティングも行っており、自社のみならず、顧客のDXを通した地域全体のDXによる社会課題の解決を図っています。
コンサルティング機能については「成長の第2エンジン」としており、その他にもIFA、商社、人材紹介等の各種機能を提供することで地域経済のさらなる活性化を図ることを狙いとしています。
従来の銀行はこういった機能を無料で提供するといった傾向があり、質が低いながら自身の労働力を無料提供することで顧客満足度を高めていました。
それでは、「三方よし」とはなりませんので、他の金融機関より高度なコンサルティング機能を提供し成果によってフィーをいただくモデルへと北國銀行は変更しています。
以下は中期経営計画からの抜粋となりますが、2019年3期ですでに4億円の収益を上げており、4年後には15億円を目標としています。
北光銀行「新中期経営計画」2019年11月より
今後、本当にCSVを実現しようとする場合、地域金融機関はアマチュアコンサルティングから、プロコンサルティングへと移行していくことが求められます。
3.雑にまとめ
その他、CSV経営を実現、DXを推進していくための組織・人材・システムのあり方について本著の著者である㈱デジタルバリュー(北國銀行のシステム子会社)が苦労話も含め、実行フェーズごとに整理が行われている箇所もございます。
銀行の本部でDX推進に苦慮されているかたはぜひ手にとっていただきたい1冊となっておりますので、詳細につきましては本著をご覧ください。
本日はこれまで。