こんにちは。
表題の件。
本日は、地方銀行のビジネスモデル変革に関する実務的なケーススタディとして、『地域金融機関のデジタルトランスフォーメーション〜北國銀行にみるゼロベースのシステム戦略と組織人事〜』(以下、本著)から読み取れる構造的な示唆についてメモを残します。
なお、本著は北國銀行が運営するECサイトで販売されている書籍です※1。
※以下は書籍出版当時(過去)に執筆した備忘録です。
1. CSVと地域金融機関の関係性
本著の根底にある「CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)」とは、ポーター教授が提唱した概念であり、「経済的価値を創造しながら社会的ニーズに対応することで社会的価値も創造すること」を指します。
実務的に解釈すれば、「社会課題を解決した結果、顧客の利便性が向上し、企業収益も上がる(三方よし)」というアプローチです。
北國銀行が過去に「真の顧客本位の経営に向けた営業戦略の大転換」をスタートさせた際、以下のような現場の実態(課題)が提起されています。
- 目先の利益を優先し、プロダクトアウトの戦略になっている
- 理念と現場の現実に乖離がある
- 営業に必要なのは、最終的には「お願い(プッシュ)」であるという潜在意識
これに対し、同行は「企業や個人、社会の課題を解決することや、人のよりよい暮らしをサポートすることを優先させた結果として、最後は自社の利益になる」というCSVの基本論理を組織内で共有し、その改革の一環として2016年に営業ノルマを廃止しています(自主目標制への移行)。
地方銀行は本来、地域経済の発展と寄り添う組織であり、本質的にCSVの概念と親和性が高い存在と言えます。
2. CSVのためにあるべき銀行機能
「社会課題を解決する銀行の機能」とは何か。融資(金融)だけで解決できる課題は多くありません。
そこで必要となるのがコンサルティング機能ですが、これは従来の金融機関が提供してきた「無料の付加サービス」ではなく、「結果にコミットした有料のコンサルティング機能」を意味します。
北國銀行では、自社内にコンサルタントを抱え、中小企業へのICTコンサルティング等を通じた地域全体のDX推進を図っています。従来の銀行のように「質は低いが労働力を無料で提供する」モデルでは、持続可能な三方よしは実現しません。そのため、高度なコンサルティング機能を提供し、成果によってフィー(対価)をいただくモデルへと変更しています。
本著出版当時の「新中期経営計画」によれば、コンサルティング機能を「成長の第2エンジン」と位置づけ、4年後には15億円の収益を目標として掲げています。
今後、地域金融機関が真にCSVを実現しようとする場合、アマチュアコンサルティングから「プロコンサルティング」への移行が求められるのではないでしょうか。
【追記】2026年4月現在の答え合わせ:コンサル収益の実績とフルクラウド化
上記の記事執筆から数年が経過した現在、北國銀行の「仮説」が実務としてどう機能しているのか、直近のデータに基づき答え合わせを行います。
① コンサルティング収益は目標を突破
無料の手間請負から「有料のプロコンサル」への転換についてですが、北國フィナンシャルホールディングスの直近の決算実績等を確認すると、コンサルティング収益は約19億円規模にまで到達しています※2。
かつて掲げていた「15億円」という目標をクリアしており、ビジネスモデルの転換が机上の空論ではなく、確かな収益の柱として機能していることが証明されています。
② DXを支える次世代システム「BankWill」の全貌
本著のタイトルにあった「ゼロベースのシステム戦略」についても、劇的な進化を遂げています。
2021年に国内初となる勘定系システムのパブリッククラウド化(Microsoft Azure)を実現した後、現在は次期コアバンキングシステム「BankWill(バンクウィル)」の構築が進められています(2027年稼働予定)※3。
これは、AzureやGoogle Cloud、さらにはAWSを組み合わせた「マルチクラウド構成」を採用するものであり、特定ベンダーへの依存(ベンダーロックイン)を完全に排除するクラウドネイティブな金融基盤です。レガシーシステムの維持コストを削減し、それをコンサルティング等の「攻めの領域」に再投資するというDXの全体構造が、現在進行形で具現化されています。
地域金融機関における経営戦略とシステムアーキテクチャの連動において、引き続き注視すべきケーススタディと言えます。
長くなりましたが本日はこれまで。
出典・参考
- ※1 ECサイト「COREZO」書籍販売ページ(https://www.corezo-mall.com/utsunomiya/products/detail.php?product_id=6575)
- ※2 北國フィナンシャルホールディングス 決算説明資料(コンサルティング収益の実績値等に基づく)
- ※3 株式会社CCIグループ プレスリリース等「次期コアバンキングシステム『BankWill』」に関する各種公表資料(2026年3月等の発表含む)