LIFE LOG(浦和の民のblog)

うらわの民の金融blog

徒然なるままに約1000文字…金融兵士→コンサル戦士による金融系戯言録

住宅ローンの金利選択議論について思うこと

こんにちは。

表題の件。
最近、金利上昇に伴いSNSなどで「金利が上がってきているから、変動で借りる人はもう失敗だ」みたいな発言をたびたび見かけます。

コメント欄も「友だちが固定にして得した」「変動にして後悔してる」といった、結果論で盛り上がる「得した・損した」の応酬ばかり。

こういうやり取りを見て、少し本質的な議論から遠ざかっている気がしたので、自身の整理も兼ねて金利選択の考え方を記載しておきたいと思います。

 

 

 

35年の金利変動予測は不可能という前提

まず前提として、住宅ローンは30年、35年という長い期間の契約です。

この間に金利がどう動くかなんて、金融のプロではない素人がピタリと当てるのは不可能です。変数があまりにも多すぎます。

にもかかわらず、「予想が当たったか外れたか」に一喜一憂するのは、あまり建設的ではない気がします。
「予想」ではなく、「機能」と「資金調達」の視点で捉え直すと、少し景色が変わって見えます。

変動・固定金利の機能を整理する

金利タイプを「損得」ではなく、どういう役割(機能)があるかで見てみます。

固定金利の機能は「保険」

変動金利は、金利が低いメリットを享受できますが、金利上昇リスクを自分で負います。

一方、固定金利の機能は、「金利上昇による支出増のリスクを、手数料(金利差)を払って銀行に肩代わりしてもらう」点にあります。要するに「リスクヘッジ(保険)」です。

こう考えると、判断基準はシンプルになります。

「変動金利との差額という『保険料』を払って、どこまでリスクを抑えれば、自分が許容できる範囲に収まるか」
ギャンブルではなく、「万が一の際のリスク対策コストをいくらで買うか」という、コストとリスクのバランスの話になります。

シミュレーションでリスクを可視化する

リスクが許容範囲内かどうかを知るには、予測ではなくシミュレーションが手っ取り早いです。

シナリオで考える

  • 最楽観シナリオ: 完済するまで一番低い金利が続くケース。
  • 最悲観シナリオ: 5年ルール等の適用範囲内で、急激に金利が上がるケース。

今はシミュレーションツールを使えば、こうしたシナリオで「月々の返済額が最大いくらになるか」を簡単に計算できます。もし「最悲観シナリオ」の返済額を見て、「これでは生活が破綻する」と感じるなら、それは金利を選ぶ以前に、物件価格や借入額が身の丈に合っていないというサインかもしれません。

まずは最悪のケースでも生活が成り立つラインを確認するのが先決です。

ライフイベントに合わせた固定化

リスクの許容範囲がわかったら、次は固定金利をどう使うか。ここではライフイベントとの兼ね合いがポイントになります。

支出のピークに合わせてリスクを消す

家計の支出は一定ではありません。公的データ(文部科学省の調査*1)を見ても、教育費がかさむ時期(中学・高校・大学)に負担が集中します。

この「支出が増える時期」に、金利上昇による「ローン返済増」が重なるとダメージが大きい。ここを狙ってリスクヘッジします。

例えば、10年後に高校進学を控えている場合、借り入れ当初から「10年固定」などを選び、教育費がかかり始めるまでの期間、住居費を完全に固定してしまうという方法です。

これは単なる金利比較というより、「支出の第一波が来るまでの10年間、金利変動の不確実性を排除するための必要コスト」として固定金利を選ぶ、という考え方です。

(期間終了後の金利リスクについては、別途シミュレーションが必要です)

資金調達と運用の視点

ここまでは「支出」の話でしたが、住宅ローンを「資金調達」と捉える視点もあります。

調達コストを固定して、管理しやすくする

変動金利で低コストを維持しつつ、浮いたお金を投資に回すのも一つの正解ですが、逆に「調達コストを固定してしまう」のも一つの考え方です。

  • 調達の固定化: 例えば1%程度の金利で固定できれば、住宅ローンのコストは「確定した固定費」になります。
  • 運用の目標設定: コストが決まっているので、余剰資金をインデックスファンドなどで運用する際、「この調達コスト(1%)を上回るリターンを目指せばよい」と目標がシンプルになります。

金利の動きを気にする労力を減らし、資産運用という別の領域に集中することで、家計全体のバランスを取りやすくする。これも一つの戦略かと。

結論:心の余裕が大事

つらつらと書きましたが、借りる前の整理心構えは以下の3点にまとめられるかと思います。

  1. 予想しない: 当たるかわからない将来予測を判断基準にしない。
  2. 数字で見る: 最悪のシナリオでいくら払うことになるか、数字で把握する。
  3. リスクを抑える: 自分が耐えられる範囲にリスクを収めるために、固定金利(保険)を使う。

最終的な選択は個人の判断になりますが、このプロセスを経ることで、納得感を持って決断できます。「損得」だけで判断して、結果が裏目に出た時に後悔するのを避ける意味でも、金利選択を「予想の勝敗」ではなく、「リスク管理の実行」として捉えるほうが、精神衛生上も良いのではないでしょうか。


年内の更新はおそらく最後になります。
来年もよろしくお願いいたします。

*1:※文部科学省:「子供の学習費調査」