こんにちは
本日は表題の件。
先日スルガ銀行・スマートデイズに書いた記事の続報です。
リンク先に以下の資料が貼り付いています
- 「シェアハウス関連融資問題」に関する経過のご報告と今後の対応について
- 危機管理委員会による調査結果の要旨
今日は危機管理委員会による調査結果の要旨を読んで思うことをつらつらと書いていきます。
1. シェアハウス案件の全体像
顧客数:1,258名
融資総額:203,587百万円
20億近い金額の融資が出ていましたが、スルガ銀行の利益剰余金は2018年3月決算で30億計上されていますので、全額回収不能となった場合もこの件だけでは債務超過に陥ることはなさそうです。
ただし、後述されているような審査体制では同様にリスクの高い融資が出ている可能性もあるため、他案件での貸倒が増加する場合は、債務超過に陥る可能性もあります。
2. 問題として指摘した事項(抜粋)
1. 顧客に販売する不動産価格が転売によりつり上げられていたと推測されること
スマートデイズ社は不動産の仲介ではなく、仕入れ(転売)を行っていたため、宅建業法で定められている仲介手数料3%以上のマージンを得ることができていたと想定されます。
そのため、スマートデイズ社の利益分購入者は高い価格で不動産を掴まされていました。
本来、購入者も不動産市場と比べ高い価格であることが分かりそうですが、スルガ銀行が実施する不動産評価結果がスマートデイズ社より還元されていたため、購入者が誤認していた可能性があります。
2. 自己資金の残高を証明する通帳の偽造・改ざんなど
通帳偽造・二重契約が行われていたとのことですが、完全に銀行側の審査プロセスが見透かされています。
また、それを営業担当者ベースでは認識されていたことが分かります。
以下、一部引用します。
なお、1 名の営業担当者については、かぼちゃの馬車の販売会社の 1 つから、複数の案件について「銀行用」と「実際」の 2 通りの試算を記載したファイルをメールで受領していたこと、その後、実際にそれらのファイルで「銀行用」と記載されていた金額での契約書が顧客から提出されて融資が実行されたことが確認されている。したがって、この営業担当者については、二重契約と自己資金の偽装についての認識があったものと認められる(当該営業担当者は、当委員会のヒアリングにおいて当該ファイルについては「記憶にない」と述べているが信用できない)。
当該営業担当者から他の営業担当者にこれらのファイルが転送されたことを示す直接の証拠はない。しかし、二重契約や自己資金の偽装が行われている事実が口頭で他の営業担当者に伝えられていたり、(漠然とした形であれ)認識共有されていた可能性も否定できない。
以上より、相当数の行員が、自己資金の偽装の可能性について認識していたと考えられる。
何故、担当者は認識した上で見過ごしてきたのでしょうか?
2. 今回の事態を招いた原因として考えられる事項
1. チャネル営業の問題点
営業人員も限られているため、不動産屋に営業を任せる手法はどの銀行もとっていますが、誠実に業務が遂行される先であるかを審査・モニタリングする体制が整備されていなかったため、スルガ銀行は寝首を掻かれてしまいました。
2. 内部統制の不全(審査機能の不全)
営業部門の幹部が融資の実行に難色を示す審査部担当者を恫喝するなど、圧力をかけることも行われ、これに対して審査部門が抗し難いという状況が生じていた
先に述べたように、牽制機能を果たすべき審査セクションが長い間機能を果たしていなかったようですので、他案件でも同様な状況になっていることは容易に想像ができます。
3. 顧客本位の業務運営(コンダクトリスク)に対する意識の欠如
顧客リスク等を考えれば、早々に手を引くべき案件でしたが、銀行収益を追求するあまり事態を放置した結果、最悪の事態を招いてしまいました。
これは他銀行にもいえることで、今一度「顧客本位」の銀行運営についてどの銀行にも考えてもらいたいものです。
以前、銀行の「顧客本位」について書いた記事を張っておきますので、お時間があればお読みください。
長くなりましたが、本日はこれまで。