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うらわの民の金融blog

徒然なるままに約1000文字…金融兵士→コンサル戦士による金融系戯言録

送金の手数料は本当に高すぎるのか~全銀ネットについて~

こんにちは

 

浦和の民です。

 

本日は表題の件。

 

www.nikkei.com

 

FinTechスタートアップがスピーカーとなるイベントではよく目の敵にされている「全銀ネット」と「CAFIS」ですが、外圧が高まってきました。

 

今回は、全銀ネットの手数料が割高なのかどうかについて、提供する役務と他国の事例等を踏まえ引き下げの余地が本当にあるのか考えていきたいと思います。

 

 

1.提供する役務とは

 

まず、全銀ネットが提供する役務を簡単におさらいします。

 

なぜ、全銀ネットが提供する役務を考えるかというと、銀行の振込手数料は全銀ネットへ払う手数料の上に、銀行の収益となるスプレッドが上乗せされているため、ベースとなる全銀ネットへの手数料が減れば、その分安くなる仕組みだからです。

 

さて、全銀ネットが提供する役務は、乱暴な言い方をすれば「振り分け」と「清算」業務です。

 

まず振り分けについてですが、全銀ネットの場合は「B銀行へ100万円振り込む」という指示を振込元(仕向銀行)から振込先(被仕向銀行)へと情報を伝達するハブ的な役割を担っています。

 

全銀には統一のフォーマットがありますので、国内どの銀行に送金する場合でも同じ情報を送信することで、日中帯であれば、ほぼリアルタイム~数分で送金が完了します。

ただ、送金が完了するといってもそのタイミングで資金が動いているわけではありません。送金の度に資金を動かすのは非効率なので、まとめて差額(増えてるのか減ってるのか)を清算する方式がとられています。

 

その役割についても全銀ネットが担っています。

具体的には、1日分の資金移動の情報を集計し、銀行間で動いた差額をまとめて清算しています。

 

たとえば、A銀行とB銀行において、A銀行の仕向被仕向の合計が+100万円、B銀行の合計が-100万円だった場合、B銀行の日本銀行の口座から、A銀行の日本銀行の口座に100万円移動して帳尻を合わせます。

 

下の図は全銀ネットのHPに掲載されているイメージ図です。

見ていただければわかる通り、左では1対nで帳尻を合わせなければいけない清算業務を、右では資金精算機関=全銀ネットが真ん中で計算して、帳尻を合わせてくれています。

 

全銀ネットを通過する電文数や清算業務に対する手数料を銀行が全銀ネットに対して支払っているため、利用者に対して振込1件当たりの振込手数料が発生する仕組みとなっています。

 

図1 為替決済のイメージ

(出所:全国銀行資金決済ネットワークhttps://www.zengin-net.jp/zengin_net/clearing/)

 

 

共通して行う業務を集約して簡単にしましょう、という思想に基づいて設計されている仕組みであり、1973年に発足以後、何度も更改を重ね、現在第7次全銀システムが稼働しています。

 

CAFISもクレジットやデビット、電子マネー等で似たようなことをやっており、さすが日本の通信の祖であるNTTさんならではだなぁと感心します。

 

ちなみにですが、以前紹介したZEDIも全銀の持ち物です。

 

www.urawanotami.com

 

 

2.海外はどうなのか?

 

手数料は提供する役務に対する対価の支払だと思いますので、比較対象が必要です。

同様な仕組みについて海外に目を向けるとどうなのでしょうか?

以下、2地域について確認します。

 

(1)アメリカ

アメリカの場合、送金には大きくACH送金と電信送金の2種類が利用されています。

 

ACHが日本の全銀システムに近いものになります。1回あたりの振込手数料も数セントと非常に安価です。ただ、欠点として振込の着金は1~2営業日程度かかります。日本では時限内の振込が当日に着金しないことはないため、考えにくいかもしれませんが、急ぎの送金には向きません。

もちろん当日着金する電信送金もありますが、こちらは個別発信となるため、1件当たり30ドル~50ドル程度手数料が取られます。(日本の約3~5倍)

 

(2)オーストラリア

また、オーストラリアの場合、4大銀行と呼ばれる大手銀行間の送金は手数料無料かつほぼ即時に着金します。

ただし、それ以外の中小金融機関への送金はアメリカ同様翌日等の着金になるケースが多いようです。

(一方で、労働者の多くが都市部に集中しており、4大銀行に口座を持っていない消費者は少数であることから、多少別の銀行に着金するのが遅くなったとしても大きな問題はないと思われますが)

 

 

3.全銀ネットの手数料は下げられるのか?

長々と説明してきましたが、現状のサービスを維持するのであれば、全銀ネットに対する手数料引き下げ要求は不当なのではないか?と筆者は考えます。

 

理由としては【国内のすべての金融機関に当日中に着金する】【一度もシステムが止まったことがない】という巨大なシステムを運用し続けるためにはやはりそれ相応の対価を支払ってしかるべきだからです。

 

米国のように【安いけど遅い】といったことを許容するのであれば話は別でしょうが。。。

 

ただ、日本でも全銀ネットやCAFISを通る電文を少なくすることで、手数料率を下げようとするFinTech企業が多く誕生しているのも事実であるため、現在のサービスを常に改善しいかなければ継続的に利用され続けなくなることが予想されます。

 

したがって、場当たり的に全銀ネットの手数料を下げるのではなく、ステークホルダーとの緊密に調整を行いそれぞれが継続的に発展していくための議論が進むことを期待しています。

 

 

本日はこれまで。