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浦和の民の金融blog

徒然なるままに約1000文字…金融兵士→見習いコンサルの金融系戯言録

身動きの取れない銀行~ステークホルダーからの圧力~

こんにちは。

 

浦和の民です。

 

本日は表題の件について。

 

 

 

 

最近銀行を取り巻くニュースがもろもろ出ていたのでそれについて思うことをつらつらと書いていきます。

 

 

1.当局からの圧力

 

昨年12月に「金融検査マニュアル」が廃止されたことに伴い、金融機関の貸倒引当金の算出方法に変更が生じています。

今までとは異なり、足元や将来予測に基づいて柔軟に引当金を積み増すことが可能となっています。

 

しかしながら、フォワードルッキングで外部環境の変化が自社に与える影響を分析できていた地銀は少ないと想定されるため、おそらく今回の変更を反映した引当金の算出ができた金融機関は少ないのでは?というのが筆者の見解です。

 

そのため、将来の顧客の景気後退を見込んで資本の積み増し≒減配に踏み込めた金融機関は14社にとどまっています。

 

2.株主からの圧力

 

一方で、資金のだぶつきは株主が許しません。

 

現在、多くの銀行は自己資本規制で求められている国際統一基準または国内基準を大きく超えた自己資本を確保しているため、株主還元(自社株買いや配当)を行っていくことを否定する理由がありません。

 

配当性向が100%を超える銀行銘柄が3銘柄、それ以外に70%を超える銘柄が10銘柄と多くの配当を出すことで、なんとか株主価値を維持しようと苦心していることが見て取れます。

 

ただ、これだけ外部流出を続ければ、資本の積み増しに限らず、自社事業の成長への投資が困難になるため、早晩株価下落による株主価値のさらなる毀損が起こるのではないかと考えています。

 

たらい回しのイラスト(女性)

 

3.求められる銀行の対応とは?

 

当局と株主というステークホルダー間で挟まれている銀行ですが、現在珍しく求められている状況にあります。

 

その中で、需要が消失した事業者の短期的な収支ギャップの穴埋めと、今後中長期的に発生するであろう業況悪化先のトリアージをいかに迅速かつ正確に実行できるかが、これからの銀行継続の重要なトピックスになると思います。

 

今後第二波発生時に再度自粛要請等が十分起こりうると思われますので、初動対応の実施の評価を行った上で、来る第2波に向けたPDCA、態勢強化を金融機関には期待したと思います。

 

本日はこれまで。

日本の銀行はなぜ「FinTech」になれないのか?~迫られるリスクの取捨選択~

こんにちは。

 

浦和の民です。

 

感染症の拡大による自粛生活もだいぶ長くなってきましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

 

多くの金融機関も交代勤務等が導入され、1日おきで休み自宅待機となっている人もいるやに聞いております。

 

当方はリモートワーク中心ですが、比較的プロジェクトが暇な時期に差し掛かり、各社のレポートや本を読んでいるところです。

 

 

さて、本日は表題の件。

 

過去のレポートを読み漁っていたところ、きれいにまとまっている表(後述)に出会い、それをもとに思うところを書きたいと思います。

 

  

 

1. 進まないAPI開放

 

オープンAPI(Application Programming Interface)という単語をいまさら説明するつもりはありませんが、多くの金融機関においてそもそも自社内のシステム間でもAPI接続は許容されていません。

 

下表をご覧ください。

 

こちらは2019年に日銀が公表したレポートですが、過半の金融機関は「a」:API?なにそれおいしいの?状態のシステム構成を選択しています。

 

f:id:urwts:20200513150551p:plain

(2019 年 5 月 日本銀行 「銀行・信用金庫におけるデジタライゼーションへの対応状況-アンケート調査結果から-」http://boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb190524.pdf)

 

このような状況になっている理由は、過去より銀行システムは「外部の危険からさらされないシステム」であることが重要だったからです。

 

おそらく多くの金融機関でそうだと思いますが、勘定を動かす際インターネット回線に接続していない勘定系の専用端末を操作していると思います。

 

銀行のPCで変なサイトを見る人はいないと思いますが、もしインターネットと勘定系が同一のネットワークに存在している場合、世界のあらゆる場所からサイバー攻撃の対象となるリスクがあるため、動作する環境を分けることでリスク低減を図っています。

 

一方で、APIを使用することによって、操作・権限を制御することは可能であるものの、社会インフラである「勘定系」をその環境以外から動かされるリスクを負ってしまいます。

 

「外訪先からタブレットのアプリ経由で勘定系にアクセスすることができれば、どんなに楽か。。。」

と銀行員なら一度や二度考えたことはあると思いますが、「リスク低減」のため実現していないのが現状です。

 

2.【. システム変更の柔軟性・機動性「低」】である弊害

 

勘定系が守られるメリットを説明しましたが、「システム・サイバー攻撃リスク低減」を取ると「柔軟性・機動性」が損なわれます。

 

例えば、「勘定系から○○というデータを取り出して、新しい××システムに毎日連携して」ということを行いたい場合、「○○」を取り出すためのデータを取り出す「穴」を作らなければなりません。

また、「××システムに毎日連携する」という仕組みも新たに組む必要があります。

 

文字にすると簡単そうに見えますが、勘定系システムは外部のITベンダーが構築しているケースが大半であるため、お金をかけてシステムを修正してもらう必要があります。

 

もちろん投資になりますので、稟議を書いたり~(以下略)と面倒な内部プロセスを経なければなりません。それに伴う莫大な期間、労力、金銭が発生します。

 

ただ、環境の変化は待ってはくれません。検討の間にもどんどん世の中は変わりますので、検討していたものは完成時には陳腐化している場合があります。

 

今の金融機関システムは「システムリスク」は低減しているものの、「新サービスを迅速にマーケットに投入できないリスク」を抱えてしまっているわけです。

  

 

 

3.どこまでのリスクを許容するか?

 

銀行システムにおいて「安全性」と「機動性・柔軟性」はトレードオフです。

今までは「安全性」に全振りすることが重要でしたが、これからは「機動性・柔軟性」をもっていなければ、めまぐるしいスピードで変化する「顧客」についていくことはできません。

 

従いまして、なぜ「FinTech」になれないのか?の回答は「既存ビジネスの安全性を重視するあまり、必要なリスクテイクができていないから」となります。

 

もちろん、投資余力のある銀行は徐々にテクノロジーへの順応を見せ始めています。そういった銀行は生き残り、いつまでもリスクテイクできない銀行は退場していくことでしょう。

 

自行庫のシステムが使い辛いと思っている職員の皆様におかれましては、自行庫がどのようなシステム投資を行っているのかを見ることで、自社の将来性を測ることができるかもしれませんね。

 

本日はこれまで。

送金の手数料は本当に高すぎるのか~全銀ネットについて~

こんにちは

 

浦和の民です。

 

本日は表題の件。

 

www.nikkei.com

 

FinTechスタートアップがスピーカーとなるイベントではよく目の敵にされている「全銀ネット」と「CAFIS」ですが、外圧が高まってきました。

 

今回は、全銀ネットの手数料が割高なのかどうかについて、提供する役務と他国の事例等を踏まえ引き下げの余地が本当にあるのか考えていきたいと思います。

 

 

1.提供する役務とは

 

まず、全銀ネットが提供する役務を簡単におさらいします。

 

なぜ、全銀ネットが提供する役務を考えるかというと、銀行の振込手数料は全銀ネットへ払う手数料の上に、銀行の収益となるスプレッドが上乗せされているため、ベースとなる全銀ネットへの手数料が減れば、その分安くなる仕組みだからです。

 

さて、全銀ネットが提供する役務は、乱暴な言い方をすれば「振り分け」と「清算」業務です。

 

まず振り分けについてですが、全銀ネットの場合は「B銀行へ100万円振り込む」という指示を振込元(仕向銀行)から振込先(被仕向銀行)へと情報を伝達するハブ的な役割を担っています。

 

全銀には統一のフォーマットがありますので、国内どの銀行に送金する場合でも同じ情報を送信することで、日中帯であれば、ほぼリアルタイム~数分で送金が完了します。

ただ、送金が完了するといってもそのタイミングで資金が動いているわけではありません。送金の度に資金を動かすのは非効率なので、まとめて差額(増えてるのか減ってるのか)を清算する方式がとられています。

 

その役割についても全銀ネットが担っています。

具体的には、1日分の資金移動の情報を集計し、銀行間で動いた差額をまとめて清算しています。

 

たとえば、A銀行とB銀行において、A銀行の仕向被仕向の合計が+100万円、B銀行の合計が-100万円だった場合、B銀行の日本銀行の口座から、A銀行の日本銀行の口座に100万円移動して帳尻を合わせます。

 

下の図は全銀ネットのHPに掲載されているイメージ図です。

見ていただければわかる通り、左では1対nで帳尻を合わせなければいけない清算業務を、右では資金精算機関=全銀ネットが真ん中で計算して、帳尻を合わせてくれています。

 

全銀ネットを通過する電文数や清算業務に対する手数料を銀行が全銀ネットに対して支払っているため、利用者に対して振込1件当たりの振込手数料が発生する仕組みとなっています。

 

図1 為替決済のイメージ

(出所:全国銀行資金決済ネットワークhttps://www.zengin-net.jp/zengin_net/clearing/)

 

 

共通して行う業務を集約して簡単にしましょう、という思想に基づいて設計されている仕組みであり、1973年に発足以後、何度も更改を重ね、現在第7次全銀システムが稼働しています。

 

CAFISもクレジットやデビット、電子マネー等で似たようなことをやっており、さすが日本の通信の祖であるNTTさんならではだなぁと感心します。

 

ちなみにですが、以前紹介したZEDIも全銀の持ち物です。

 

www.urawanotami.com

 

 

2.海外はどうなのか?

 

手数料は提供する役務に対する対価の支払だと思いますので、比較対象が必要です。

同様な仕組みについて海外に目を向けるとどうなのでしょうか?

以下、2地域について確認します。

 

(1)アメリカ

アメリカの場合、送金には大きくACH送金と電信送金の2種類が利用されています。

 

ACHが日本の全銀システムに近いものになります。1回あたりの振込手数料も数セントと非常に安価です。ただ、欠点として振込の着金は1~2営業日程度かかります。日本では時限内の振込が当日に着金しないことはないため、考えにくいかもしれませんが、急ぎの送金には向きません。

もちろん当日着金する電信送金もありますが、こちらは個別発信となるため、1件当たり30ドル~50ドル程度手数料が取られます。(日本の約3~5倍)

 

(2)オーストラリア

また、オーストラリアの場合、4大銀行と呼ばれる大手銀行間の送金は手数料無料かつほぼ即時に着金します。

ただし、それ以外の中小金融機関への送金はアメリカ同様翌日等の着金になるケースが多いようです。

(一方で、労働者の多くが都市部に集中しており、4大銀行に口座を持っていない消費者は少数であることから、多少別の銀行に着金するのが遅くなったとしても大きな問題はないと思われますが)

 

 

3.全銀ネットの手数料は下げられるのか?

長々と説明してきましたが、現状のサービスを維持するのであれば、全銀ネットに対する手数料引き下げ要求は不当なのではないか?と筆者は考えます。

 

理由としては【国内のすべての金融機関に当日中に着金する】【一度もシステムが止まったことがない】という巨大なシステムを運用し続けるためにはやはりそれ相応の対価を支払ってしかるべきだからです。

 

米国のように【安いけど遅い】といったことを許容するのであれば話は別でしょうが。。。

 

ただ、日本でも全銀ネットやCAFISを通る電文を少なくすることで、手数料率を下げようとするFinTech企業が多く誕生しているのも事実であるため、現在のサービスを常に改善しいかなければ継続的に利用され続けなくなることが予想されます。

 

したがって、場当たり的に全銀ネットの手数料を下げるのではなく、ステークホルダーとの緊密に調整を行いそれぞれが継続的に発展していくための議論が進むことを期待しています。

 

 

本日はこれまで。